土曜日, 4月 28, 2007

アニメ:ロケットガール

野尻抱介原作、女子高生が宇宙飛行士になるという話であるが、実はラノベの皮をかぶったバリバリのハードSF、しかも屈指の宇宙開発モノである。

日本の有人ロケット開発というこの作品プロットは発表から10数年たった現時点においても古くなっている点は全くない。むしろようやく時代がこの作品を受け入れられるようになってきたと言ってもいいぐらいである。

そのアニメ化ということで期待半分不安半分で視聴をしてきたのである。

うん、出来は標準以上であろう。原作を割りと忠実に追っておりアニメとしての仕上がりも悪くない。一番不安であったロケット関係の設定や描写も申し分なかった。

・・・・・けど、何か期待はずれなのであった。特に不満なところは無いはずなのに何故?

で、なんとなく観続けて第10話。
お話は、3人目の宇宙飛行士も決まったところに、NASAの冥王星探査衛星にトラブル発生。日本のガールズ達が解決に向かう・・・

これだ!
 やっとテンションあがってきた。と同時にこれまでの不満の原因もわかった。

観たかったのは「女子高生宇宙に行く話」じゃなかったんだ。
「ロケット、もしくは宇宙開発プロジェクト、女子高生を宇宙に連れて行く話」
これだ。これをみたかったんだ。

これまでのストーリーは主人公であるゆかりの視点が中心であり、「女子高生宇宙へ行く話」となっていた。これはアニメ化での構成意図であろうし、実際きっちり出来ていた。
しかし原作の最大の魅力は、一見軽めのストーリーが、その実、確固たるリアリティ(と最低限のSF設定)に基づいて構成された、有人ロケット開発そのものだったのである。少なくとも私にとっては。
これまでの漠然とした不満の原因は、ロケット開発そのものがストーリーの重要な軸としてにあまり描かれていないことだったのだ。

いや、実は描かれてないことはない。
例えばゆかりが飛行士になる意欲を失いかけた時に、技術主任が開発スタッフ全体の宇宙への思いを語るところや、新しい燃料の開発成功のシーンなどがそう。

しかし、やっぱりこれは、ゆかりがまた飛行士を目指したり、拒絶したりという流れをつくるための描写であり、「女子高生が・・」というプロットをフォローするものでしかなくメインプロットではなかったのである。

原作の「技術やプロジェクトそのものに萌える」という魅力は、やはり作者の宇宙への憧憬と見事な表現力の賜物なのだろう。以下に原作を忠実に追ったとしても、この魅力をアニメとして表現するのはやっぱり難しかったのだろうなあと思う。

しかし10話から、おそらく12話まで続くであろう冥王星探査衛星のトラブルシューティングミッションにおいては、ストーリーの必然から、日本とNASAとの組織の関係、飛行士のプライド、探査衛星開発に携わる科学者の長年の思い、さらにはそれに応える宇宙飛行士たち思い、といった宇宙開発にかかわるモノ達に関する描写が大きな比重を占めてくることになる。
これだこれだ。これで宇宙開発そのものが前面に出てくることになる。それに技術そのものの面白さも描写されるだろう。

例えばスキンタイト宇宙服。これ自体が非常に秀逸なコンセプトであるのだがこれまでは女子高生の羞恥心を刺激するという役割しか与えられてなかった。しかし今回のミッションで、この宇宙服で活動することでしかトラブルを解決できない、という流れがありNASAの宇宙服と比べ以下に画期的な宇宙服であるかが示されることになるはずだ。
これだよ、これ。私はそんな新技術や驚きのアイデアなどに萌えたかったのだ。

もしかしたらシリーズ構成として、ゆかり視点が段々と宇宙開発全般を広く認識できるようになっていくこと、を意図しているのかもしれない。だとしたらなかなかに思い切った構成であるが、せっかくの宇宙モノ企画である。ロケットと宇宙そのものの魅力を早目に出しておいて欲しかったと思う。

いずれにせよ残り2話、楽しみである。
そして是非、次のミッションである「私を月まで連れてって」の新シリーズにつなげて欲しい。