日曜日, 9月 24, 2006

ハルヒ:季刊エス16 涼宮ハルヒの憂鬱 山本寛インタビュー

季刊エス 16,2006 Autumn 10月号, p.70-77
 涼宮ハルヒの憂鬱 山本寛インタビュー
 山本氏演出、特に「(放送)第12話 ライブアライブ」を中心に紹介

「ライブアライブ」が映画「リンダリンダリンダ」との関係に答えたものがありました。関係者からの「リンダ…」に言及したものは初めてみました。その部分の要約。#は私のコメントです。

・「リンダ…」公開(2005/7)の前に構成会議で「ライブアライブ」をやることは決まっていた。
・「リンダ…」のチラシをみて「ライブ…」とそっくりであることを知り観にいった。
・どうせ“似ている”といわれるのはわかっているから積極的にオマージュとして(リンダ…を)取り入れた。
・作品に共感を得るには、作り手と受け手に共通の体験やイメージがないと不可能と(山本氏は)考える。
・雨のシーンは観客を入れて(さらに視聴者をも)盛り上げるため。意図があり、ただ真似ているだけではない。
 この後は、コピーとオリジナリティの考えなど。

#観客の盛り上りは、2つの作品ではっきりした違いがあります。「リンダ…」では、しょっぱなの“リンダリンダ~♪”のところで一気に盛り上がりますが、これはバンドの曲で盛り上がったというよりは、みんなが共通して弾ける曲だったという感じです。まあどのバンドがやっても同様だったろうですけど楽しく盛り上がってよかったね、という感じ。これが始まるまでの前の曲が「ふうーらーいぼー」とか、のどかなのが続いてたのも盛り上がる要因だったのかもしれません。エンディングに向けての強いコントラストになっていると思います。
#一方「ライブ…」では、「なんだあいつら」という戸惑いから、長門の超絶技巧のイントロで見る目が変わり、どんどん盛り上りが高まっていく感じが、躍動的なカメラワークともあわせて表現されています。サビの転調のとこなんか何回みてもゾクゾクきます。
#「リンダ…」は受け手の経験から共感を揺り起こすことを意図したシンプルな演出で、「ライブ…」は、バンドの演奏を強烈にアピールする演出であり、まったく異なったものであるといえるでしょう。

その他、インタビューからいくつかピックアップ(要約してます)
Q.「うる星やつら」のムードに近い感じがしますが?
A.多分に意識はしているが、(うる星とは違って)日常の描写をしっかり描いた。マンガっぽくなんでもありは避けた。
Q.9話(サムデイ イン ザ レイン)について
A.キョン一人称をはずした場合の視点として「観客」の視点を避けるために監視カメラ風の映像とした。コンピ研が設置したという設定を匂わせている。アングル固定だと常に全身での描写が必要で非常に大変であった。(上半身アップなどとすると下半身は省略できる)
#なるほど。長門が本を動かしてみくるの着替えシーンをさりげなく隠すのは、カメラの邪魔をするだけでなく、スタッフへのアシストでもあったわけですな。
Q.ハルヒが戻ってからの情緒的な音楽も印象的ですが?
A.ハルヒのデレデレっぷりを演出したのだが、谷川氏の脚本があまりにデレに振れていたので、最後の相合傘を渡す時は目をそらさせて少し戻しておいた。
Q.12話について
A.音楽シーンをいれたくてやることにしたが、後になって「この回は、ハルヒが自分の姿勢に動揺するという話なので、それまでの11本で破天荒さを充分に描けるだろうか」と気がついて「しまった」と思った。次のシリーズがあるのならそれまで出さないほうがよかったかも、と思った時期もあった。
#結果的に充分成功していて、特に話数シャッフルが効いていると思います。DVDを順番に観ている「憂鬱」の6話は思いの他、すんなり話がまとまっていて、この感じで時系列で12話までいったとしてら「ライブアライブ」の回の印象は随分と違ったものになるような気がします。
Q.文化祭では群集や一般生徒も細々描かれていますね。
A.文化祭は全員が主役で、全ての生徒がSOS団的な面白い瞬間を味わっているということです。文化祭を描いたアニメは多々あるが一般生徒を動かしたことはなかったので手は抜きたくなかった。動画枚数は倍になった。
Q.手前のメインの芝居の後ろで別の人たちが存在している。
A.「踊る大捜査線」でも後ろの芝居が別のストーリーとなっている、というのに影響を受けた。
#「踊る…」では全ての役者・スタッフが劇団のように話をつくっていくようになっていった、という話を聞いたことがあります。後ろでやっていた何気ないアドリブでも、それをみんなが膨らませたり、小道具(レインボーもなか、とか)についても、あれやこれやとアイデアを出し合っていったらしいです。
Q.演奏シーンの作画は?
A.ハルヒはリップシンキング。演奏シーンはプロの演奏ロトスコープを使った。ハルヒの顔は平野綾のレコーディング時の映像をもとにアニメーターが一から起こしなおした。
#「きずあとなぞる~」のシーンの原画とタイムシートが紹介されてます。

他にも、ライブアライブの絵コンテ・原画がいくつか紹介されています。