水曜日, 7月 19, 2006

ハルヒ:2話 回想と一人称視点

(本文修正・画像追加 2006.7.30)
当サイトは、12話のキョン視点ネタ をきっかけにハルヒネタサイトになってしまいましたが、本当は映像演出・特にカメラワークの分析をしようと思ってたのです。アニメ版ハルヒは本当に丁寧に作られており、見返すほどにその細やかな演出に感心してしまいます。作品をより面白くしているバックボーンとして、表面的には意識されていない演出が多々あると思います。
そんな演出のあれこれを、気がつく限りピックアップして分析していきたいと思います。

回想からの転換:モノトーンからフルカラーへ
 放送第2話(構成第1話)「涼宮ハルヒの憂鬱 I」
 オープニングのキョンのモノローグはモノトーン風の色調で描かれており入学当初の回想シーンであることがわかります。クラスでのキョン自身の自己紹介もこの中であり回想の中です。

続くハルヒのあの自己紹介「・・・ただの地球人には興味ありません・・・」のシーンですが、実はここもモノトーン風の画面、まだ回想の中なんですね。キョンはまだハルヒの存在を認識しておらず、このセリフも背中越しにしか聞いていません。つまりハルヒの自己紹介のシーンをキョンは直接目撃していないんです。あくまでハルヒのセリフの記憶と当時のハルヒの髪型などからキョンが再構成したシーンであり完全に回想の一部です。




<ハルヒの自己紹介に凍りつく教室>




キョンが「これ笑うとこ・・・?」と振り返った瞬間から画面がフルカラーとなり、ここで初めてキョンはハルヒを認識します。まさにここが物語の始まりを示すシーンであり、キョンがハルヒに巻き込まれる物語が開始することをはっきりと示されています。

感心のポイント:
普通に考えるとハルヒの自己紹介のとこが一番インパクトありますよね。だからハルヒのセリフからフルカラーに切り替えたほうが効果があるかな、と思いがちですが、そこをはずしてきたのがうまいです。というか、キョン一人称視点ではこれが必然です。
ふつーの描写の延長上にハルヒのぶっ飛んだセリフを続けることによって、キョン+クラス全員が感じたであろう「?????なに、今の?????」という違和感を視聴者にも共有させることに成功してます。
これを、ハルヒがしゃべり始める直前に効果音をジャーンとつけて「東中出身 涼宮ハルヒ!!」などとやられてしまっては、完全にキョン視点からはずれてしまいます。この時点で人称視点がハルヒに移ってしまいかねず、これまでの回想シーンの位置づけが台無しです。

原作の導入部を見事に表現できていると思います。

#DVDでは放映時にカットされていた、自己紹介後の教室内でのヒソヒソ話リアクションが追加されているそうです。やっぱりクラス内での反応をきっちり盛り込んでいたのですね。

なお、この後も語りで「・・出会ってしまったのだ。」と回想としての言い回しもありますが、これは物語の語り部としてのポジションからくる回想表現であり、ハルヒ以前の回想とは別物です。


ところで、上記の回想シーンの中にもう一段深い回想としてクリスマスのサンタクロースのシーンがあります。これは色調をセピア調にして古さを表現している上に、画像を揺らすことによって時間的な距離感を表現しています。この揺れの表現は、他でも時間的・空間的な距離感をあらわすの用いられています。詳しくは次回 近日 そのうちなんとか・・・。