“ハルヒ”はアニメ化に際して原作の一人称視点の原則を忠実になぞっています。ただし、一口に一人称視点といっても実際に映像化するには色々な方法があるので、どのような構図・カメラワークを採用するかが演出の腕のみせどころです。
#インタビュー記事によると、山本氏・石原監督ともども、相当検討を重ねたようです。
もっとも主観的な一人称視点はキョンが見ている映像で、いわゆる“見た目”というやつです。
“キョン視点”という表現ですと、「一人称視点」なのかそれtも「見た目構図」なのか区別がつきにくいので、一応表現を“見た目”で統一します。
2話(憂鬱I)は物語の導入部であり、視聴者に世界観をしっかり理解してもらうために、日常および背景をきっちり説明し、またキョンとハルヒの出会いから接近の変化を描かねばなりません。
この一連の流れのなかで、キョンの“見た目”構図とカメラワークの組み合わせが効果的に使われており、キョンの心情やハルヒとの距離感がうまく表現されています。
以下は「普通の人間には興味ありません」宣言の次の朝、キョンがハルヒの前に腰をかけるまでです。
・ハルヒは先に席に座っている
・横目で様子を伺うキョン
#画像が多くなるので割愛しましたが、ここでのキョンの目線の動きも細かくて、気にしてないふりをしつつ目線を向けるという描写がされています。
ここまでは通常の描写です。
この次のカットがキョンの“見た目”です。(GIFアニメにしてみました。動かない場合はクリックしてみてください)
ちょっとわかり難いかもしれませんが、広角で周辺部に歪みが出ている絵であり、ハルヒが視界の隅に動くにつれて歪みが強調されています。
これは
「キョンがハルヒに顔を向けずに横を通り過ぎつつ視界の隅っこでハルヒの顔を見ている」
という状況を、キョンの見た目構図にして、それを広角レンズでの歪みという絵にすることによって、視界の隅で見ている、という表現を実現しているわけです。現実の“見た目”の絵はこうは歪まないと思いますが、一連の流れで自然に「ああ、横目でみてるんだな」と理解できてしまいます。
この次のカットでキョンは思い切って「なあ昨日のあれ・・・」とハルヒに向かって話しかけることになるのですが、上記のつなぎカットは、そこまでのキョンの様子見の心情をさりげなく表現している巧みな演出だと思います。
#その(2)に続く予定・・・・・・・・・
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