木曜日, 11月 23, 2006

Where the Hell is Matt?

藤子・F・不二雄の短編に「ある日…」という作品がある。

映画サークルの4人が作ったそれぞれの自主制作作品をテーマに、途中まではユーモラスに、そしてラストは衝撃的に終わる名作「ある日……」


藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 (7) (amazonの解説より引用
初出はマンガ奇想天外/82年

この作中のユーモラスな自主作品のひとつが“世界中を走る男”というアイデアのもの。ピラミッドの前をランナーが駆けてゆく。次のカットではパリ、次はロンドン、モスクワ、アメリカ、インド・・・・、と世界中を駆け抜けてゆく。(記憶に頼っているので国は違うかも) 種を明かせばランナー(=作者)は仕事の関係で世界中を飛び回っているので、行く先々の名所名跡でランナーの格好に着替えて走りそのフィルムをつなぎ合わせる、ということだ。


初めてこの短編を読んだとき「旅行好きの誰かで本当にやってる人いるだろうなあ」と思ったものだ。

いたよ。
Where the Hell is Matt?


世界中の名所名跡(それもすごいとこばかり)で楽しそうにダンスをしている。ダンス? 手をふり足をじたばた、はっきりいってファニー。けど楽しそう。本当に楽しそう。こう書くと藤子・F・不二雄の短編のようにユーモラスな作品だと思うでしょう。
全然違う。

正直に言う。泣いた。

ワールドサウンド系のBGM(Deep Forest:Sweet Lullaby)とのマッチングが抜群なのもあるのだろう。素直な感動と切なさと懐かしさと胸をかきむしられるような焦燥感とがあいまった不思議な感情が呼び起こされるのだ。
なんなんだろうね、この強烈なメッセージ性は。映像と音楽、それにのせる人の感情の強さなんだろうか。未見の方は是非。

藤子先生が観たらどんな感想を持ったかなあ・・・・きっと同じようにびっくりしたと思うなあ。

#いろんな反響はひろぶろ:世界中でダンス その2 のコメント欄を参照のこと。感動者多数。


なんだかこれと似たような感覚の記憶があるなあ、と、つらつらと考えて思い出した。
「ニューシネマパラダイス」のラストだ。
映画監督となった主人公が、幼い頃なついていた映画技師の遺したフィルムを観るシーン。検閲カットしたキスシーンのみをつなぎ合わせたフィルム。懐かしさや自分の人生を振り返る、主人公の凝縮された思いが伝わってくるシーンである。懐かしさと切なさの感じがちょっと似ているような気がした。


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