水曜日, 8月 08, 2007

映画:トランスフォーマー スピルバーグのダークサイド本領発揮

トランスフォーマーを観た。

スピルバーグやりたい放題の映画。ご馳走様、と言うほかない。
世間的にはマイケル・ベイ監督の手腕が評価されているが、この映画のテイストは完全にスピルバーグのものだと思う。

トランスフォーマーの世界観と容赦ない地獄絵図のような戦闘シーン、幼児性と残虐性をエンタテイメント超大作で両立させ、しかも興行的に大成功させている。こんなことが出来るのは彼ぐらいのものだ。

市街戦描写は本当に凄い。非現実的なロボットが暴れていて破壊の限りをつくしているにも関わらず、直接には市民の被害の描写がない。だから戦闘の迫力を純粋に娯楽として楽しむことが許されているのである。どう観たって数百人単位で死んでるだろ、あれじゃ。

どこの戦闘シーンでもいい。仮に、人体損傷のカットを、いや血が流れるカットだけでつけ加えたなら、即プライベートライアン顔負けのR指定間違い無しのジェノサイドムービーになってしまう代物だ。けど仕上がりは大迫力のアクションモノ。
超映画批評では、

この映画の難点は、とくにラストバトルなど、トランスフォーマーが激しく動く際にカメラが寄りすぎて、逆に映像の快感度を下げている点だ。トランスフォーマーの動く速度のリアリティには相当力を入れたようなので、なるべくCGのアラが目立たないようにとの意味合いもあるのだろうが、こちらとしてはもっと引きの映像を入れてほしいと思う。

としているが、これはCGのアラを防ぐという目的ではないと思う。いくつかあった引きの映像ではどうしても怪獣映画の構図になっていた。特撮好き向けのロボットものとしてはそれでもいいのかもしれないが、やはりこの映画では、“圧倒的かつ理不尽な力に蹂躙される人間達”という視点を徹底したのだと思う。

それにしても、スピルバーグもうまいことバランスをとったと思う。
このバランスの実現については、マイケル・ベイの貢献が大きい。映像職人として弩派手なアクションシーンの構成力は、戦闘の激烈さを際立たせつつ、スピルバーグの残虐性をうまく覆いかくしている。元々プロットもテーマもおまけみたいなものだから、まさにベイ向きの映画だったのだ。

・・・・えーと、褒めてますからね。一応誤解なきように。


予告編だといわゆる侵略(インベイジョン)SFっぽい印象が強いのだけど、そういうわけで、本編はいきなりの戦闘で、メガトロンvs米軍 ⇒ メガトロンvsサイバトロン+米軍、という流れであり、米軍のプロパガンダとしてもいい線いってる。

ラプターやオプスレイといった最新鋭機も出てくるけど、インパクトはAC-130ガンシップが最高だね。「空飛ぶ砲台」の異名は誇張でもなんでもなく、左舷にのみ装備された重火器105mm砲を左旋回しつつ地上の一点に叩き込む姿は米軍の攻撃シーンの中で一番迫力があった。あれ本物なんだよねえ。

そうそう、この映画ロボット達のCG以外は極力ライブアクションで撮影したらしい。実際、その効果は映像の迫力に充分発揮されていると思う。現実に起こりうるアクションについては、まだまだCGでは及ばないところがあるのだな、と認識した。

#なにげにT2(戦闘機じゃなくてシュワちゃんのやつね)へのオマージュがあったのは何故だろな?
 カマロから自転車で逃げるとこだ。